20220529 日曜午後礼拝
聖書:ヨシュア23:11-14
題目:神を知るための環境づくり
説教者:高曜翰 伝道師
1.ヨシュアの最後の説教
これまでヨシュア記を通して、人生で問題なのは環境ではなく、環境に対する態度であることを学びました。神様の力で生きる神の民にとって問題の大きさは関係ありません。イスラエル人は神様を信頼し従順に従うことで、カナン人の王たちを征服するという成功を収めました。しかしその後で、カナン人たちを占領することに失敗し、カナン人と同じ場所で住むようになってしまいました。神様の力を間近で体験し、勝利という祝福を得たにもかかわらず、人を恐れ、最後まで神様の言葉に従うことができなかったからです。そこでヨシュアは最後の説教で長老やリーダーたちを集め、カナン人との交わりを禁止することを伝えます。占領に失敗したイスラエル人にとってのこの最終警告は、どんな意味を持っているのかを一緒に見ていきましょう。
2.人間が滅びる原因
ヨシュアは11節で「あなた方は深く慎んで、あなた方の神、主を愛さなければならない」と言っています。原文のヘブル語聖書を見ると、あなたの「ネフェシュ」のために」とあります。「ネフェシュ」とは魂を意味します。そしてここでの愛は「アヘーブ」というヘブル語が使われています。特に創世記からヨシュア書までを見ると、「アヘーブ」は親から子に、または神から人間にそそぐ愛に頻繁に使われています。つまり親が子供を、神が人を愛するような無償の愛、犠牲をいとわないアガペーの愛で主を愛することが、人間の魂の存続のための唯一の手段だと教えています。そして、神を愛するために、12節で「カナン人と結婚する」ことを禁止しています。そして、それを破るなら、神様はカナン人を追い払わないとまで宣言し、カナン人がいくら素敵に見えたとしても、イスラエル人にとっては「落とし穴」「脇腹の鞭」「目の棘」となり、滅びに至ると言っています。カナン人との結婚を禁止する理由は何でしょうか?ヨシュアは14節で「心を尽くし、精神を尽くして、神様を知らなければならないと教えています。つまり、カナン人との結婚は神様を知るうえで大きな障害となることを意味しています。そもそも結婚制度は神様が造られたものであり(創世記2:24)、夫婦関係を通して神様と人間とのあるべき関係を学ぶためものです。しかし、神様が滅ぼすしかないと決めた、まさに神様の性質とは真逆にいる人々と結婚するということは、神様との正しい関係を学ぶ結婚生活の場が、神様の嫌がることを学ぶ場になってしまうということです。間違った価値観や判断基準に毎日触れる結婚生活によって、知らず知らずのうちに神様の性質から遠ざかるようになります。アメリカで英語を学んでいるときに、英語の先生が「旦那に英語が下手になっていると指摘された」と言っていたことを思い出します。外国人学生の下手な英語がるのですネイティブの英語力に悪影響を及ぼしていたのです。特にこの時代は、結婚は個人的なものではなく、家と家とを結ぶものなので、その悪影響は個人にとどまらず家全体に広がります。だからヨシュアは「あなたのネフェシュのために」「カナン人と結ばれてはいけない」と言っているのです。人が滅ぶ原因は、神様から離れ愛さなくなることです。それを忘れてはいけません。
3.人間は意志の弱い生き物
ある人は「自分は意志が強いから、どんな環境でも大丈夫」というかも知れません。しかし実際はそうではありません。人は自分で考えて、自分の意志で選んでいると思い込んでいますが、その考えと意志はとても小さな変化によって簡単に支配されてしまうものだからです。アメリカのデューク大学のダン・アリエリは、様々なデータをもとに、人間の意志がいかに環境によって制限されているかを教えてくれます。今回は一つだけ取り上げてみましょう。とある雑誌の定期購読を勧めるホームページに選択肢がありました。「ウェブのみで閲覧59ドル」「印刷物でのみ閲覧125ドル」「印刷物とウェブの両方で125ドル」の3つです。ダン・アリエリはこの不思議なページを自分の学生たちに見せてアンケートを取りました。その結果、「ウェブのみで閲覧」を選んだのは16%で「印刷物でのみ閲覧」を選んだのは0%、「印刷物とウェブの両方」を選んだのは84%になりました。多くの人が高くてもお得な3番目を選んだことがわかります。そして、ダンは0%となった意味のない項目とも思える2番目を取り除いて、「ウェブのみで閲覧」と「印刷物とウェブの両方」の2択で再度アンケートを取りました。その結果、「ウェブのみで閲覧」が68%で「印刷物とウェブの両方」が32%と逆転の結果が出たのです。この実験結果は、人間の意志は、一見無駄に見えるような選択肢にでさえ大きく左右されており、自分が本当に望んでいるものも分かっていない、ということを教えています。カナン人との結婚による影響は、一見大したことのないように見えても、神の民としての判断力を大きく狂わせる原因になることがわかります。アメリカで英語を学んでいる時に、クラスメイトのアラブ人にイスラム教徒はイスラム教徒とだけしか結婚しないのかと聞いたことがあります。その時彼はこう教えてくれました。男性のイスラム教徒に限ってのみ、女性のキリスト教徒かユダヤ教徒と結婚できるそうです。男性にのみ許可されているのは、霊的なリーダーシップが男性側にあるためであり、キリスト教徒とユダヤ教徒に限定されているのは、多神教や無宗教の人間の価値観があまりにもかけ離れているため分かり合えないからだそうです。彼らは結婚パートナーから受ける影響の深刻さを知ったいたのです。つまり、人間の判断は小さなことで簡単に変わり、自分の意志が環境によって制限されていることにすら気付くことができないため、神を知る環境作りが大切なのです。
4.必要なのは強い意志ではない
イスラエルの人々は、ヨシュアの最後の説教を聞いて、力強く3度も「主にのみ仕えます」と答えました。彼らの意志の強さが見えます。しかし、神様は人間の意志がいかに環境に左右されやすいかを知っていました。だから前もってイスラエル人に警告し、カナン人の聖絶を命じていたのです(民数記33:55、申命記20:18)。そしてヨシュアも「あなた方は主に仕えることができない」と拒絶しました。ヨシュアも人間の意志がいかに弱く簡単に変わる物かを知っていたからだと思います。そしてヨシュアは記念碑を建てました。イスラエルの民の告白の証拠を残すためです。これを見ると、絶対に裏切らないと強い意志を示したペテロを拒絶したイエス様が思い出されます。ペテロは「みんながつまづいても自分はつまづかない」と強い意志を示しました(マタイ26:33)。しかしイエスは、ペテロの強い意志や励ましのような言葉を拒絶し、「鶏が鳴く前に3度私を知らないというだろう」と言いました(マタイ26:34)。その結果、ペテロの自信は打ち砕かれ、自分の弱さに気付くことができました。ペテロは復活したイエス様から神の愛と神の国を学び(ヨハネ21:15-19、使徒1:3)、立派な使徒として最後まで従順にみ言葉を宣べ伝えました。ペテロは自身のの手紙をこう締めくくっています。「イエスキリストの恵みと知識において成長しなさい」(2ペテロ3:18)。神を知る知識が私たちを神をさらに愛するようにさせ、成長させるのです。
5.神を知る環境を大切にしよう
今日私たちが学んだことは3つです。①魂の救いに必要なのは神への愛です。この世の富や名声、実績が私たちの魂を救うのではありません。神を愛する者だけが神の国に入ることができるのです。②そして愛に必要なのは神への知識です。私たちの強い意志や自信は役に立ちません。必ず打ち砕かれます。③だから神への知識を得るための環境を作りましょう。強くなろうとしなくて構いません。人間の意志や自信は環境によって簡単に制限され、変えられてしまいます。ペテロはイエスから直接学びましたが、私たちにはキリストの体である教会があります。教会以上に神を知るのにふさわしい場所はないことをどうか忘れないでください。
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