20220703 日曜午後礼拝
聖書:列王記上17:1-7
題目:苦しみは何のため?
説教者:高曜翰 伝道師
1.アハブとエリヤ
アハブとは「父の兄弟」を意味するイスラエルの王です。その名はアハブがその父オムリのように偉大であることを示しています。オムリはそのリーダーシップをもってイスラエルを安定させました。外国の軍隊を追い出し、民衆の望む宗教を与え、ユダとの争いをやめさせました。政治的・軍事的に評価の高い王です。アハブはその父から受け継いだイスラエルの国際的地位を高めました。シドンの国の王女イゼベルを妻に迎え、シリア地方におけるレバノン杉の重要な供給地とエジプトに至る通商路を押さえました。経済的・軍事的にイスラエルを強固なものにし、22年の間イスラエルを治めました。後のアッシリアの侵攻を防ぐためのシリア12カ国同盟軍結成時には、重要な役割を果たしています。ただ一つ欠点があったとすれば彼の不信仰でした。彼は常に神を見ずに人を見ていました。
エリヤは「私の神はエホバ(YHWH)」を意味するイスラエルの預言者です。ヨルダン川東の、マナセ半部族が住むギレアデ地方のテシベという地域出身ということ以外は詳しくわかっていません。少なくとも、ユダやレビ族など有力部族の出身ではありません。たわかっていることは、反逆罪となるような言葉を命がけで伝える従順な預言者であるということです。
2.アハブに対する神様の言葉
アハブとエリヤは、英雄的国王と田舎者、または悪しき不信者と従順な信者という両極端にいる二人として捉えることができますが、共に神の御業を見ることになります。神様は、預言者エリヤを通して「私の言葉のないうちは、数年雨も露もないでしょう」(17:1)とアハブに宣告しました。アハブとその父がせっかく安定させたイスラエルを飢饉によって混乱させようとしているのですから、悪魔のようなひどい仕打ちと言えます。神様から見たアハブの評価は、人々とは真逆で最悪のもので、罰せざるを得ないものでした。なぜアハブは神様からとても悪い王として評価されたのでしょうか。それはアハブがイゼベルを通してバアルという完全に異国の神を導入したからです。それまでイスラエルはヤラベアムの始めた金の子牛像を使った礼拝をしていました。方法は間違っていましたが、それでも主を礼拝していました。しかし、その礼拝を完全に異教の神バアルに移し替えたのです。そしてバアルのための神殿と祭壇とが首都サマリヤに建てられました。しかもその影響はユダにまで及びます。17:1の言葉はアハブの悪行に対する審判の言葉でした。私たちは、いくら人々から賞賛を浴びるようなことをしても、神様から認められなければ意味がないことを知らなければなりません。アハブのした事は国を安定させているように見えて、実際は神の国を破壊する行為に他なりませんでした。神様は私たちの成功を見るのではなく、神様への心と態度を見るのです。
3.エリヤに対する神様の対応
17:1の言葉は王への反逆であり、人々から憎まれる言葉でした。しかしエリヤは神様の言葉を伝えたのです。なんという従順な神の僕なのでしょうか。しかし、そのエリアに対する神様の仕打ちはひどいものでした。悪いことをしたわけでもないのに神様は「身を隠しなさい」(17:3)とエリヤに命じました。王や民から命を狙わるからです。しかし神様はエリヤに天使を送って守らせることはしませんでした。そして食べ物についての心配ですが、「カラスに命じて養わせよう」(17:4)と言われました。カラスはレビ記11章によると汚れた動物です。カラスを通して生命を維持ことは考えられないことであり、あってはならないことです。そして、「シドンに住みなさい」(17:9)と言われました。異邦人の、しかも憎きイゼベルの国です。さらに神様は「やもめ女に命じて養わせよう」(17:9)と言われました。当時、やもめ女はホームレスの次に貧しい存在でした。ホームレスに施しを受けなければならい状況というのは屈辱以外の何物でもありません。しかも、ただ恵んでもらうだけでなく、死のうとしているやもめとその息子から「パンを奪い取る」(17:13)ことをしなければなりませんでした。エリヤの神様から命令された行為はどれも、人から尊敬を集めるどころか、非難され馬鹿にされるようなものばかりでした。なぜ神様はこのような屈辱的な仕打ちをしたのでしょうか。聖書には直接的な理由は書いてありませんが、それは、エリヤの持っているこの世の間違った価値観や世界観を破壊し、神の僕として訓練するためではないでしょうか。17:1の言葉の3年後にエリヤは再びアハブの前に現れます。それはバアルの預言者たちを打ち負かし、エホバの神様が本当の神様であることを示すためです。その時にありえないような方法で勝利を納めます。つまり、この3年間のエリヤの生活は、神様が常識ではあり得ない方法でその技を行われることを学ぶためだと考えられます。
神に選ばれた祭司も、神殿に入る前に清めの儀式を行います。神様が罪の性質を持つ人間をそのまま用いることはしません。同じように、神様は私たちを用いるとき、私たちをこの世の間違った価値観や世界観から洗い清めるのです。エリヤをこのようにつらい環境に置かれたのは、エリヤを通して異邦人に神の栄光が伝えられるためであり、神様から離れたイスラエル人を、異邦人を通して救うための神様の大きな計画でもありますが、17章における神様の働きは、エリヤ自身を訓練するためと見ることができます。同じような事例が出エジプト記にも見られます。モーセは40歳の時、自分の地位や力、若さを使ってへブル人を助けようとしましたが、神様は助けてくれず、モーセはへブル人に見捨てられ異邦人のミデアン人の所に逃げました。80歳の時、地位も力も若さも失い、異邦人の下で隠れて暮らすモーセを神様は用いられ、イスラエルの民を救ったのです。私たちが自分の力で何かをなそうとするとき、神様はまず、私たちの持っている間違った価値観や世界観の上に形成された自尊心や自信を一緒に打ち砕かれます。私たちは砕かれた後、神様に用いられる器になるのです。
4.イエス様の場合
マルコによる福音書10章17-22節を見ると、金持ちの青年が出てきます。青年はイエスを「よき師よ」と呼び、「永遠の命を受けるためには、何をしたらよいでしょうか」と尋ねます。イエスは青年が自分をおだてて、自分が神の国に入るのに十分ふさわしい存在であることを認めてもらうためにこのような質問をしたようです。イエスは戒めを守るように教えます。すると青年は戒めを小さい時からすべて守っていると自慢げに答えます。するとイエスは、いつくしむ気持ちで「あなたに足りないことが一つある」と言い、「持っている物をみな売り払って、貧しい人々に施し、私に従ってきなさい」と言います。なぜイエスはこのようなことを言ったのでしょうか。たった一つの足りないこととは何だったのでしょうか。それは青年が、神様ではなく自分の能力とこの世の富に頼っていたからだと考えられます。青年は自分の富を誇りとしていましたが、この世の富は、必ずしも神に祝福されている証となるわけではありません。彼は自分の行いと結果に満足しており、神の国に当然入れるものと考えていたようです。しかし、神の国に入るためには神の民にならなければならず、行いによって認められるという、この世の間違った価値観や世界観を打ち砕かなければなりません。神の国に入るには、成果が必要なのではなく、神様を一番に愛することです。青年にはその気持ちがなかったようです。その証拠に、イエスの言葉に落胆した青年はイエスの前から去っていきました。私たちは自分の力で神様に仕えたり、神の国に入ることはできません。自分に力を与えた神様の計画を認めて、仕えなければなりません。私たちに必要なのは神様以外には何もいらないと思うほどの愛です。神様は私たちを神の国に導くために、それ以外の余計なものを完全に打ち砕きます。
5.この世の価値観
この世の基準は目に見えるものです。一流の大学を卒業していたり、たくさん稼いでいれば、素晴らしい人のように考えます。しかし、神様の基準は違います。私は以前は、神様に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。私のようなものでは神様の栄光のために働けないと考えていました。努力しても努力しても足りないものだらけだったからです。しかし、アメリカ留学中に奉仕した教会で、人の力ではなく、愛するその心で奉仕することを学びました。力やお金や時間があるから奉仕するのではなく、神様から私たちに与えられた賜物を理解し、それを愛する神様のために用いる時、大きな実を結ぶことができるのです。力そのものが良い結果をもたらすわけではありません。私たちがエリヤのように神様の言葉に忠実に生きる時、神様が私たちを訓練し、私たちを通して神様の力が良い結果として現れるのです。
6.結論
アハブは人々が称賛するような偉大な結果を残しましたが、神様と無関係に生きていきました。エリヤの言葉を聞いても、神様の考えを知ろうとも悔い改めようともしませんでした。むしろ神様の言葉を伝えたエリヤを憎み、殺そうとしました。一方で、エリヤは神様の言葉に従順に従い、後の大きな働きのために訓練を受けました。それは常識から外れた道であり、屈辱的な道でしたが、エリヤは従いました。それは後の大きな神の技が現れるためです。神の言葉通りに生きているのにも関わらず、苦しく屈辱的な人生を送っていると感じる皆さん、どうか今自分の持っている間違った価値観や世界観を捨てて、最後まで神様の言葉にしがみついてください。私たちは今、将来の大きな働きのために訓練を受けている最中です。どうか今の苦しみが喜びに変わる日を信じて耐えてください。必ず神の栄光を表す者に生まれ変わるでしょう。
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